担当教員:大坂 元久 教授

1)

ラットにおける高血圧メカニズムの解析で、慶応義塾大学医学部腎臓内科と共同研究している。とくに自律神経の関連から検討している。従来は予想されていても実証できなかった自律神経の1Hz以下の揺らぎに高血圧、腎血流に関わる成分があることを発見し、その成果は2002年にCirculationに掲載された。これを指標として降圧剤の交感神経への関与を検討中である。また、糖尿病ラットモデルでもその血行動態を検討中である。


2)

正常な心拍変動に1/fゆらぎがみられるが、心筋梗塞後の患者ではこの傾きが急峻になると突然死を起こしやすいことが分かっている。が、その機序は不明であった。これを実験データとカオス理論から明らかにし、Phys. Rev. Eに掲載された。そして、心拍変動の1/fゆらぎを再現する電気回路モデルを考案して2004年に論文に掲載された。現在この電気回路の臨床応用をめざしている。また、ホルター心電図装着中に突然死した症例、急性心筋梗塞を起こした症例など11例集積した。これらの心拍変動解析に基づいて前兆があることをつきとめた。この前兆の信頼性を検証するために様々な症例400例以上のホルター心電図を現在解析中である。


3)

トヨタ自動車・デンソー・日本医科大学共同研究(代表者:内科学第一加藤貴雄教授)「自動車運転中の心血管イベント・心臓性突然死の予知・予防に関する研究」に分担者として2004年3月から参画している。自動車運転中の死亡事故の5%以上は心臓性突然死によると推定されているので、この予知・予防は社会的急務である。ドライバーの心電図をステアリングから記録しリアルタイムで運転中の自律神経活動、不整脈をモニターするシステムを開発中で実車を完成させた。いままでの研究を社会に生かすためにぜひ実現させたい。


4)

観測された現象が低次元カオスであるかを判定する数値計算プログラムをすでに論文として発表しているが、もっと簡単に幾何学的に判定するプログラムを開発した。これが可能になれば、その現象をモデルとして記述可能になり現象の振る舞いを予想できるようになる。現在投稿中である。

◆ 論文・特許 ◆