最近の獣医学・獣医療の多様化と高度化には目を見張るものがあります。このような複雑多岐に変容する獣医療に向けた獣医学教育の高度化は必然ですが、それと同時に獣医療を補助、支援し、生命倫理の理念に基づく動物看護や臨床検査等の高度な専門技術者の育成を求める声が高まっています。将来的には、獣医学と動物保健看護学が両輪となる高度獣医療システム(制度)が構築されることが望まれます。
この度、動物保健看護教育を推進する大学(日本獣医生命科学大学、帝京科学大学、倉敷芸術科学大学、ヤマザキ動物看護短期大学)では、動物保健看護学教育の推進と動物看護並びに獣医療の発展に貢献するため、全国動物保健看護系大学協会を設立しました。
全国動物保健看護系大学協会 設立宣言
動物保健看護学は獣医学のパートナーとして位置づけられる学問分野であり、獣医学・獣医療の多様化並びに高度化に伴い、高度な専門知識及び技術を有する動物保健並びに動物看護に携わる専門技術者(獣医療技術者)を養成する必要性が高まっている。
それ故、その適正な動物看護・検査技術の高度化が必須であり、また、動物看護・臨床検査・衛生検査分野における適正な教育を受けた高度獣医療技術者が必要なことから早期に法律に基づく獣医療技術者(動物看護師:仮称)の国家資格認定制度を導入することが必要となっている。さらに、獣医療現場では、患畜が言葉を話さないことから肉体だけを取り扱う医療になりがちである。人の医療の場合には肉体及び精神の両面から対応が要求されるが、患者の精神面を支えるのが看護師の重要な仕事であると思われる。動物の場合は、特に生命倫理の理念に基づき動物の行動から動物の心を読み取り、さらに飼い主の精神面も理解することが重要となる。この意味で、獣医療においても保健看護の立場から患畜並びに飼い主の精神面を支えるのが動物看護師であると考えても間違いない。
このように、獣医学と動物の保健看護学が両輪となる高度獣医療システム(制度)の構築を推進する必要があり、これは、今後、さらに拡大していくと考えられる高度な獣医学・獣医療を展開する上で重要な課題であると考えられる。
これに応えるため、動物保健看護学教育を推進する日本獣医生命科学大学、帝京科学大学、倉敷芸術科学大学並びにヤマザキ動物看護短期大学はこれらの諸課題への対応を各大学のそれぞれのポリシーをもって展開すると同時に、大学の使命である動物保健看護学教育・学術研究をはじめとした広範囲な分野で連携を進めていくこととする。そして、高度獣医療技術者の育成に向け,今後一致協力して動物保健看護学の教育並びに研究の推進を目的として活動していくこととし,下記のとおり共同宣言する。
一、 全国動物保健看護系大学協会は、動物保健看護学の教育基盤を築き、動物保健看護学の学問的な確立に向けて総力を挙げて取り組み、わが国の獣医療及び動物衛生・公衆衛生等の発展に寄与する。 一、 動物看護師(仮称)の国家資格認定制度の確立並びに社会的地位の改善に向けて、その推進活動を行う。 一、 動物保健看護学分野の学術交流活動の推進を行う。 一、 全国動物保健看護系大学協会の総会・個別問題研究会を定期的に開催する。
2008年4月1日
全国動物保健看護系大学協会
(日本獣医生命科学大学、帝京科学大学、倉敷芸術科学大学、ヤマザキ動物看護短期大学)